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竹でタナゴ竿を作ってみませんか?

タナゴ竿を、竹でなんとか簡単に製作できないものか、と考えてみました。 和竿の製作は今や伝統工芸となっており、製作工程の技術はそう簡単に習得できるものではありませんが、 趣味として自分で作った「和竿もどき」の竿でタナゴを釣るのもまたひとつの楽しみではないでしょうか? ここでは一部の工程で和竿作りのルールを破って、 「なるべく簡単に」タナゴ用の和竿作りに取り組めるように工夫しました。 一応この方法で現在自分で製作してみています、 今のところ特に問題がなさそうですので、ここでご紹介することにしました。


丸節竹の枝で作った継ぎ竿

材料

竹の枝(枝稈)を使います。丁度よい太さとテーパーの幹(稈)があればそれでも良いでしょう。 素材の竹はなんでも良いと思いますが蓬莱竹、丸節竹、矢竹から比較的適材が取れそうです。 これらがどんな竹なのかは、 竹の種類のページ を参考にしてください。 先径2.5mm程度、元径6mm程度で長さ1.7mくらいあればよいでしょう。 穂先は淡竹や真竹を竹ひごのように削って作ったほうがよいのですが、 ここでは市販されている竹ひごを使うことにします。 また適当なテーパーの竹が無ければ何本かから「よいとこどり」をすればよいと思います。


使う部分の竹は生えてから2年〜3年のものが良いと思います。 1年未満(新子、しんこ)の竹はあとでクセが出やすいようです。 また、刈り取る時期は晩秋から寒の内の寒い時期が良いようです。 この時期は竹の成分の内タンパク質が少ないらしく虫が付きにくいと聞きます。 刈り取った竹は普通は最低1年と言われますが趣味で作ってみるのなら数ヶ月乾燥させればよいでしょう。 乾燥は屋外で天日干しします、 ある程度太陽光線に当てて晒す目的もありますので多少なら雨に当たっても大丈夫です、 ただし春の彼岸を過ぎた後は湿らすとカビが生えやすいので注意します。 竹の枝の刈り取りについては生えているところの持ち主の方にお願いすれば たいてい了解していただけると思います。


穂先用の淡竹や真竹を生えているところから入手するのは大変ですので、 ホームセンターで売っている竹ひごでも良いのではないかと思います、 太さ2mm程度、長さ40cm程度あればよいと思います。 ヘビ口(竿先のミチイトをくくりつけるところ)は細めのリリアン糸を使いますが、 レーヨン製は弱いので避けます。竿尻は竹そのままでも良いですが、 握りを付ける場合は別の竹の切れ端を使ったり新聞紙を巻きつけて太くしたりします。 竿は、継ぎ竿に加工しますが「仕舞い込み」にはしませんので適当なハードケースを作ります、 プラスチックや金属の筒を利用するのもひとつの方法ですが ホウキの柄の竹なんかでハードケース(鞘)を作ると趣も出るのではないかと思います。


タナゴ竿(竹竿) 六尺 印籠継ぎ 6本仕舞 替え穂付き
使う部分 材料 規格、サイズなど 数量
竿の主な部分 竹の枝
(数ヶ月自然乾燥させる)
(丸節竹、矢竹など)
先径2.5mm程度、元径6mm程度で
長さ1.7mくらい(注1)
1本(注2)
穂先 竹ひご 直径1.8mm、長さ90cm
のものが市販されていました。
1本(注3)
穂先(替え穂)
ヘビ口 リリアン糸 ナイロン製の細いもの、2〜3cm 2本
握り 新聞紙 糊付けできる紙 10cmx30cm
水性ボンド 木工用ボンド? 少量
木綿糸 #30 適宜量
印籠芯 (注4) 真ちゅう釘、または
ステンレス釘(注5)
径1.8mm、長さ32mm 2本(1本)
径2.0mm、長さ38mm 1本(2本)
径2.7mm、長さ50mm 1本(1本)
エポキシ系接着剤 ニ液性です 適宜量
補強糸 絹糸 #50以下(ミシン糸など) 適宜量

(注1)先は細いほうが竿として釣趣がでますが加工が難しいので先径2.5mm程度としました。
(注2)求める調子を探し出したり調子を作り出すために、竹は数本あったほうが良いでしょう。
(注3)細く削るので節が入らないほうが望ましいです、節が入る場合は元から1/4程度の位置。
(注4)数量欄の印籠芯の太さの組み合わせは、どちらでもよいです。竹に合わせましょう。
(注5)印籠芯の材料は市販されているカーボンエポキシのソリッドを使うと軽く仕上がります。 浮子足素材として太さは 0.8mm、1.0mm、1.2mm、1.4mm、1.6mm があるようです。
発売元の違うものには他のサイズで0.6mm、1.5mm、2.0mmもありました。
細い短竿の場合ならこれらを使った方がよいでしょう。(2005年2月25日)
CFRPのソリッドを利用した印籠芯の製作例はCFRPの利用のページです。


道具

道具は出来るだけ家庭にありそうなものや価格の安い簡単な道具を選択しました。 ノギスは無くても大丈夫ですが有った方が便利です、 先日ホームセンターで偵察してきましたら998円で5/100mmが読めるものがありました、 ただしJISマークは付いていませんでした。 カッターナイフの刃は作業に入る前に新品に交換します、 切れない刃を使っていると力を入れすぎることになりかえって危ないですし、 勢いあまって切ってはいけないところに傷をつけてしまったりもします。 ヤスリは単目の目の粗いものが使いやすいです、 わずかに削ったりする場合はサンドペーパーを併用します。 火入れの熱源は火力の調節ができるものがよいです。 ここで使うドリルチップは2本セットで400円程度で購入できます、 鉄工用(汎用)ドリルで充分です。塗料は透明のウレタン塗料を使いますが、 釣具店の自作コーナーなどに置いてある「合成うるし」「実用うるし」「カシュー」でもOKです、 これなら「あめ色」の塗装ができます。


タナゴ竿 (竹竿、印籠継ぎ) の製作道具
道具の種類 使う目的 説明
モノサシ 切り組み 長さを測る、直径の測定にはノギスがあれば便利
鉛筆 印付け マジックインクでもよいが消しにくい
板切れ 作業台 かまぼこ板でよい
カッターナイフ 切断、削り 大型のもの、刃は新しいものに交換
耐水サンドペーパー 磨き #400があればよい
ヤスリ 切削 穂先削りと戸口削り、面取りなど
カセットコンロ 火入れ 火入れの熱源
軍手 矯め、油拭き 綿製品でないとヤケドしやすい
クレンザー 汚れ落し 磨き粉
ボロ布 汚れ落し 磨き粉で竹を磨く(竹洗い)
ドリルチップ 1.8mm 継ぎ手作り 印籠芯の太さと同じもの
ドリルチップ 2.0mm 継ぎ手作り 印籠芯の太さと同じもの
ドリルチップ 2.7mm 継ぎ手作り 印籠芯の太さと同じもの
木綿糸 仮口巻き #30、握りに巻く糸でよい
アロンアルファ 仮口巻き 仮の糸留め用
ペンチ 釘の切断 ドリルチップを固定するのにも使う
筆ペン 芽入れ 銘入れにも使える、銘入れには墨汁とペン先が便利
ウレタン塗料(注6) 塗装 竿の防水と光沢出し、透明。
ウレタン塗料うすめ液 塗料うすめ 塗料の粘度を下げる。筆の洗浄。
塗り 補強の糸巻き部分や飾り巻きへの塗装に使う
パンスト 拭き塗り 仕上げ塗りに使う
ハミガキペースト 塗装面研磨 仕上げ塗装の前に使用

(注6) ニ液性のウレタン塗料にもいろいろな種類があるようです。
混合比は、1:1のものや1:2のものがあります。
東邦化研のエンジンウレタンは混合比1:2です。(2005年2月25日)


製作方法

以下の製作方法の記述には、各工程の項目ごとにアンカーを打って項目名をそれ自身にリンクしてあります。

竹の枝の刈り取りと孫枝の始末

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像
これくらいの枝です まだ孫枝が付いています 孫枝を落としたところ

刈り取る時期は11月から2月いっぱいがよいでしょう。 11月から12月が最もよいとも言われます。 どんな竹が良いかは二項目下の「竹の選びかた」の記述を参考にしてください。 生えている状態では主稈の「竹の皮」がすでに落ちている竹の枝(第一枝稈)がよく、 竹自体は生き生きとしている元気な竹から選びます。 現場での自分の目にかなったものでも家に持ち帰ってあらためてじっくり見ると 結構アラが見えますので1本作るつもりでも数本刈っておいた方がよいと思います。 また孫枝(枝の枝、第二枝稈)は現場で数mmの長さに短く切り落としておきます。
(2007年01月05日加筆)


竹の乾燥(天日干し)

継ぎ竿製作画像

持って帰った竹は紐で軽く束ねてそのままベランダや南向きの軒下など日当たりのよいところに干しておきます。 二週間くらいしたらコロンと束を返してなるべくまんべんに直射日光が当たるようにします。 日光が当たらないと緑色が抜けません。この天日干しを約一ヶ月済ませれば、 後は室内で保管しながら最低数ヶ月間乾燥させます。 室内ではエアコンの風が直接当たらないところが良いです、 急激に乾燥が進むのはよくありません。 竹を食害する虫には チビタケナガシンクイ(リンク先は滋賀環境衛生株式会社のページ) などがあります、防虫にも注意します。
(2007年01月05日加筆)


竹の選びかた

継ぎ竿製作画像

何本か採取して充分乾燥させた竹から実際に使う竹を選び出します。 両端を手で軽く持ってジワッと曲げてみます。 穂先を継ぎ足した状態を想像しながら硬さ(強さ)や全体の調子を点検します。 途中の一部が強すぎたり弱すぎたりするものは避けます、 こういう竹は節の間隔のバランスが悪いものに多いです、 一箇所だけ節間が妙に短かったり長かったりします。 竹の断面はなるべく真円に近いものを選びます、 また節のところで竹の幹(稈)が軸ずれしているようなものは避けます。 多少の曲がりは火入れの時に矯めることで直せますが、 あまりにも極端な曲がりがあると苦労しますので、出来るだけ素直な竹を選んだほうが無難でしょう。


切り組み

タナゴ竿なら短いので「のべ竿」でもよいのですが、 やはり携帯に便利なことや趣を考えると「継ぎ竿」にしたいですね。 継ぎ竿にする場合に、竿のどこの部分に竹(原竹)のどの部分を使って組み合わせるか、 を決めなければなりません。この作業(竿の設計)を切り組み(または木地組)と呼びます。 今回は出来るだけ1本の原竹(竿の素材の竹のこと)から印籠継ぎで作るというテーマですので 主に考えるのは「どこで切るか」ということです。 また、原竹の太さ、テーパー、長さ、強さ、などのため1本から取れないセクションがある場合は 他の竹を組み合わせるしか方法がありません。 ここでは、選んだ竹の節の位置に注意します。 一節(ひとふし、継ぎ竿のセクション)の長さは30cm前後がよいでしょう。 うまく30cmにならなくて竿の長さが六尺にならない場合でも、 それは原竹の素性が原因ですので「竿の長さは竹に決めてもらう」というふうに考えてください。


竹は節のすぐ上では断面がいびつになっており 継ぎ手の加工がやりにくいので切断するところはその部分ではないところにします。 竹の節の間隔(節間長)はみな同じではありませんので 節の位置を調節するために何cmかの部分を捨てなければならない場合もあります。 継ぎ竿のセクションの長さはすべて同じではなく印籠芯の長さで多少変化します、 また、元竿には印籠芯を付けませんのでその分長くなります、 うまく考えてすべてのセクションを取るところを決め、 鉛筆で印を付け別途メモに詳細を記入しておきます。 鉛筆の印だけだと後で消えたりしますのでメモ書きを併用するわけです。 メモの内容は一番下の節から何cmの位置で切るかを書いておけばよいです。 現時点ではまだ切断しません、切断してしまうと矯めが困難になります、 切断するのはモト(基部)で不要な部分だけにしてください、その場合も10cm程度余分に残します。 穂先は購入してきた竹ひごを使うことにします。


下図は手元にあった実際の竹で切り組みしてみた例です。 竹のウラ(先の方)からモノサシで計りながら、 切断箇所に節がかからないか点検しながら、切断する位置を決めてゆきます。 どこか一箇所で節がかかってしまう場合は下図のようにその部分を除外するとか、 セクションの長さを少し変更してみたりします。穂先と穂持の継ぎは並継ぎでその他は印籠継ぎです。 通常、竿師が作られたタナゴ竿のような和竿では 各セクションを並べてみたときに節の位置がきれいにバランスよく並んでいるものです。 しかし私の方法では節はバラバラですごくデザインが悪いです、 これは「作りやすさ」を第一に考えできるだけ1本の竹から切り組みしたためです。 もし、ご自分でもっとカッコイイ和竿を作りたいと思われたら、 ある程度の本数の原竹を用意して取り組んでみてください。

タナゴ竿 小物用 五尺七寸(1771mm) 6本継ぎ 6本仕舞 仕舞長さ313mm
部位 素材 長さ(コミ含まず) コミ 印籠芯太さ 芯素材 芯長さ
穂先 竹ひご 288mm 25mm 1.8mm 竹ひご -
穂持 丸節竹 295mm 18mm 1.8mm 真ちゅう釘 25mm
穂持下(三番) 丸節竹 295mm 18mm 1.8mm 真ちゅう釘 25mm
四番 丸節竹 292mm 21mm 2.0mm 真ちゅう釘 33mm
元上(五番) 丸節竹 288mm 25mm 2.7mm 真ちゅう釘 40mm
丸節竹 313mm - - - -

芽とり・ハカマとり

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像

竹にはまだ枝の根元が付いています。 この枝を出来るだけ短く剪定ハサミで切り落とし、カッターナイフで滑らかになるように削り落とします。 この作業を「芽とり」(あるいは「硬芽とり」)と呼びます。 芽とりでは、芽(枝)の痕をえぐるような削り方はしません、 平らになって手で触ってみてひっかかりが無くなればそれでOKです。 削る要領は竹を握った方の手の親指を刃の背に当て、その親指を押し出して削ります、 一度にはごく薄く削るのポイントです、 また、カッターナイフを持った手を動かして削ろうとすると勢い余って竹の肌を傷つけることになります。 ハカマとは筍の時から竹が被っている竹の皮のことです、 採取してきた原竹にはほとんど残っていないと思いますが、 竹の皮の付け根がリング状に残っています、 このリング状のハカマを取る方法はハカマの下側にカッターナイフの刃を立てて当て竹をくるっと回せばよいです。


竹洗い

継ぎ竿製作画像

竹には生えていた時からの汚れが付いていますので、 ボロ布を水で濡らしそこにクレンザーを付けて、汚れを落とします。 芽とりした跡やハカマを取った跡は特に念入りに爪先などで汚れを落とします。 洗うと言っても水にどっぷり浸けるわけではありません、 クレンザーで汚れを取った後は乾いた布で拭きとっておくだけです。 竹洗いは竹を刈り取ってきて干す前にやっておくと乾燥した竹の色が綺麗だそうです、 しかし芽の周りはもう一度掃除しないといけませんし、 使うか使わないか解らない竹まで洗うことになっちゃいますよね。


穂先の火入れ(1回目)

継ぎ竿製作画像

原竹そのままでは細い穂先が得られません。穂先だけには竹ヒゴを使います。 穂先を挿げ替えるための竹ひごの穂先の火入れです。 竹ひごは円柱形になっていてテーパーが付いていませんが、最初はこのまま火入れします。 目安として全体がうっすらと黄褐色になりムラなく火入れが出来ればよいのですが、多少のムラはガマンします。 それよりも火に近付けすぎたり長い時間炙っていたりするとアッという間に焼け焦げてしまいますので こちらの方に細心の注意を向けます。 熱源の卓上カセットコンロでは一番小さな炎まで絞っておきます。 ヤケドの防止と竹の油拭きの目的で炙った竹の部分を持つ方の手には綿製の軍手をはめておきます。 竹ひごを火にかざして(数cm〜10cm上) 回転させながら前後にも動かし矯め(曲がりを矯正すること)る部分を加熱し 軟らかくなったところです早くしごくようにして曲がりを取ります。 細い竹ひごは熱がさめるのも短時間です、 どの部分をどの方向にまげて矯めるのかを火にかける前に充分見ておきます。 思うように矯められないからといって何度も炙りなおしても矯められません、 適当なところで妥協して次の火入れで直すことを考えます。 一回目の火入れが終わったら4〜5日放置しておきます。 なお、火入れの時に軍手を利用する方法は 「丸竹倶楽部」 の(故)東さんに教えていただきました。
(2007年01月05日加筆)


火入れ(1回目)

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像

次は穂持ちから下の部分の火入れです。 「モト矯め」と言って原竹の基部から先端に向かって順々に火入れしてゆくのが基本です。 火の入り方のムラがないように努めましょう、 竹は最初に炙った時に油のようなものが表面にしみ出てきますので軍手で拭き取ります。 最初はモトの余分の部分を利用してどれだけ炙れば焦げるか試してみましょう、 その感覚がわかれば、まずモトのほうの節と節の間の曲がりを取ります。 2〜3節間の矯めが終われば次に節周辺の矯めです、 これを繰り返して先端(ウラといいます)まで処理できれば、 今度は竹の上下を持ち直して先端から順々に矯め直します(ウラ矯め)、 方向が変わると矯め不足の場所が発見しやすくなります、 なお、元々曲がっていた方向の反対側へ多めに矯めておくとよいそうです、 これは次の火入れまでの間に竹が空気中の水分を吸って曲がりが少し戻る (竹が動く)のを考えてのことらしいです。 今回の火入れはここまでにします、 あまり何度も炙り直していると竹の温度が上がっても軟らかくならず焦げるばかりです。 これも、一回目の火入れが終わったら4〜5日放置しておきます。 火入れをすることにより竹の組成に変化が起きるのか竹は弾力性を増すようです、 またこの作業を通じて矯めることにより竿として都合のよい真っ直ぐな竹にすることができます。


穂先削り(1回目)

継ぎ竿製作画像

1回火入れした穂先はすこしキツネ色になったかと思います。 火入れした直後は真っ直ぐに伸ばしたつもりでも、時間が経つとすこし弓なりに曲がってきていると思います。 これは、元々生えていた状態の竹の表面側と内側とでは組織がすこし違うので 空気中の水分の吸収の度合いが違うのかもしれません。 これはまた後で修正することにして、今回は先端に向かって徐々に細くなるように削ってゆきます。 買ってきた竹ひごはきれいにまん丸に削ってあります、 本当は竹が生えていた時の上の方向を先端に使うべきですが、 おそらく竹ひごの状態では判別がつかないでしょう、これはあまり気にしないことにします。 もし、竹ひごの途中に節が入っているようですと、 その節の位置が穂先の長さの下から1/4程度のところに来るようにします。 削る作業は木のハギレを台にして竹ひごを寝かして回しながらヤスリで少しずつ削ります、 ヤスリは目の粗い単目ヤスリが使いやすいです。 ノギスがあれば時々直径を点検します、 また途中で曲げてみてスムーズなカーブを描くかも点検します。 削る時は、繊維が多い、生えていた状態の竹の表面側、をなるべく残すようにします、 こちらの方が内側よりも強いからです。 もう一度火入れしますので最終目標の細さまでは削りません、 細くするほど火入れの時に焦げやすいですから。 竹ひごの余分な長さはここで上下とも2cm程度残し切断してしまいます。


火入れ(2回目)

1回目の火入れが終わって4〜5日置いておくと多少曲がりが戻っていると思います。 前回と同じ要領で火入れを繰り返します。 矯めにつきましては将来継ぎ手部分になるところを特に丁寧に矯めて火入れも多少多めに入れます。 なぜかといいますと、プロの竿師の方のように塗りで漆を使う場合は 塗装後の火入れでも塗装に変質が起きにくいのですが、 今回のように合成塗料を使う場合はほんの弱くしか火が入れられないのです。


穂先の火入れ(2回目)

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像

先端を細く削ったあとの穂先は前回よりも慎重に火入れします。 細い部分ほどアッという間に焦げて燃えやすいです。火をぐんと絞って火入れします。 矯めるときはヤケド防止の軍手をはめた指先でしごくようにしたり3本の指でクンとつまんだりします、 矯めるところの両脇を左右の手で持って曲げると折ってしまったりしますし矯め具合の調節もできません。 何本か予備の穂先用の竹ヒゴを用意してまとめて製作したほうがよいかもしれません。
(2007年01月05日加筆)


切り揃え

継ぎ竿製作画像

竹に火入れ・矯めを二回済ませたところで切り組みで決めた予定の場所で切断します(穂先はまだそのままで、 両端に2cmの余分をつけたままです)。 切断は木の切れ端を台にして竹をその上に寝かせ、 カッターナイフの刃を押し当てながら竹をクルッと回せばOK です、タナゴ竿は細いのでノコギリは要りません。 切断するまえに切る場所に鉛筆で再度印をつけて、間違いがないか何度も確かめてください (印籠芯を接着した状態のセクションの長さはどうか?、各セクションは同じ長さに仕上がるか? 節の位置に間違いはないか?点検してください)。 切断してみて2mm〜3mm程度長い短いが出来て設計通りの長さと違ってしまったら 一番短くなってしまったセクションを基準に長さの調節をしましょう、 そのままですと仕上がった段階で各セクション長さが揃いません。 切断した後の戸口は軽くヤスリで面取りし、 さらにサンドペーパーを当ててササクレが出ないようにしておきます。 なお、カッターナイフの刃を押し当てながら竹をクルッと回して細い竹を切る方法は 「TAKUPAPA'S Home Page」 のたくぱぱさんに教えていただきました。


仮の口巻き

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像

継ぎ手を作る部分には補強のために細い絹糸を巻きつけて割れるのを防止します (口巻き、くちまき、挿げ口巻き)。 この口巻きは絹糸をきっちり巻いて塗装をして糸をかためるのが正式ですが、 この後も火入れをしますので今回は仮に口巻きをします。 糸は太い30番の木綿糸を使い糸と糸の間は隙間だらけで結構です、 糸はシアノアクリレート系の瞬間接着剤で全体を軽く留めておきます。 口巻きをする具体的な場所は穂持、穂持下、四番、元上の両端、元の上端です。 また口巻きする部分の長さは印籠芯が入る長さよりもやや長くしておきます。 下図で黒い色の部分が口巻き箇所です。
(2007年01月05日加筆) 継ぎ竿製作画像

継ぎ手作り 1 (印籠芯作り)

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像

印籠継ぎで竹の中に差し込む方を印籠芯と呼びます。 印籠芯は通常は矢竹や高野竹の古竹を使うのですが、タナゴ竿のように細いと加工がたいへんですし、 釘なら頭と先端を切り落としてしまえば使えるのではないかという発想です。 竹に比べて金属はその比重がずいぶん大きいのですが タナゴ竿の継ぎ手に利用するくらいの大きさならあまり問題が出ないのではないかと考えます。 釘を使うと、コミの製作がとても簡単なのです、 工業製品で規格化されていますから直径が同じドリルチップがすぐに見つかります、 そしてコミにはテーパーを付けずにコミ長さを短くすることにより重量が軽減できると思いました。 直径1.8mmの釘は長さ25mmの丸棒に、直径2.0mmのものは長さ33mmに、直径2.7mmのものは長さ40mmにそれぞれ加工します、 両端をペンチの刃で切り落としてヤスリをかけて滑らかにします。 画像での部分には抜け止めの加工が施してありますのでこちら側を竹に接着することにします。


丸頭真ちゅう釘50mmの直径は2.6mmだと思って(測定ミス)いましたが、 コミ合わせがきつすぎてドリルを傾けてこじて穴あけしてやっと芯が入ったので おかしいなと思い再度測定してみましたら2.7mmでした。 2.6mmという記述を2.7mmに変更しました。 また、25mmの釘を見つけて測定してみると直径1.6mmでした、 これは芯として使える長さが21mm程度です。(2004年12月25日)
(2007年01月05日加筆)


継ぎ手作り 2 (コミ作り)

継ぎ竿製作画像

印籠芯を差し込む方の穴(コミ)の製作(コミさらい)はドリルチップを使います。 真ちゅうの釘の直径と同じ直径の1.8mm、2.0mm、2.7mmのドリルチップです。 ドリルチップには目標のコミの長さのところに黒マジックインクで印を付けます、 そしてペンチの先に咥えてしっかりと握り固定します。 穴をあける竹の戸口(切り口)をドリルチップの先端に当て、竹の方を回転させて穴を空けてゆきます。 このとき、できるだけ偏らないように留意します。


印籠芯を込める深さの例
セクション 印籠芯の太さ 印籠芯の長さ 接着側 コミ側
二番(穂持) 1.8mm 25mm 7mm 18mm
三番(穂持下) 1.8mm 25mm 7mm 18mm
四番 2.0mm 33mm 12mm 21mm
五番(元上) 2.7mm 40mm 15mm 25mm

継ぎ手作り 3 (印籠芯接着)

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像

印籠芯を付けるほうの穴に印籠芯を差し込んでみて出ているところの長さが設計どおりか点検します。 OKならエポキシ系の接着剤で接着します。 エポキシ系接着剤は5分硬化型、30分硬化型、8時間硬化型、24時間硬化型など がありますので自分の作業スピードに合わせたものを使いましょう。 なお、釘は初めからすこし曲がっていることがありますので接着する前に点検し、 具合が悪そうなら直しておきます。 接着剤を真ちゅうの印籠芯に付けて竹に差し込む際に 再度各セクションの長さを点検しすべて同じ長さになるように微調整します。 接着後、充分な硬化時間を経た後に竿を継いでみましょう、 たぶん継ぎ目でわずかにカクンカクンと曲がっていると思います、 これは今後の火入れで直して行きます。 また、穂先のコミはややゆるいかもしれません、 これは元々の竹ひごが表示した太さに削れていなかったか、 火入れして縮んで直径が小さくなったかの原因が考えられます。 すこしくらいのゆるさでしたら塗装した後ちょうどよくなるかもしれません。


穂先削り(2回目)

継ぎ竿製作画像

今回の穂先削りでほぼ最終目的の細さまで仕上げます。 削り方の要領は1回目と同じですが、 今度は特に穂持や穂持下とのバランスを考えて継いでみて 強さのムラがなくスムーズに曲がるように調整します。 また曲げて点検するときにはいろいろな方向に曲げてみて点検します。 断面が真円に近い卵形に削るのが基本ですが正方形になってもかまいません、 正方形でもどちらの方向に曲げてもほぼ同じように曲がります。 とにかく実際の曲がり具合を点検しながら少しずつ削ることが大切です。


火入れ(3回目)

継ぎ竿製作画像

今回の火入れでは次のことに注意します。 印籠芯を接着した部分や仮の口巻きをした部分はあまりつよい火を当ててはいけません、 印籠芯を接着した合成樹脂(エポキシ系)の接着剤は変質しますし、 仮の口巻き部分のアロンアルファは燃え上がります。 竿を2セクションずつ継いだ状態で順々に火入れしますが穂先や穂持は特に火を落として弱く火入れをします。 ひと通り全体に火入れができたら竿を全部継いでみてさらに曲がった部分を矯めます。 ただ、継ぎ手を互いに回転させて継いでみたときに新たな曲がりが出るのは継ぎ手が真っ直ぐ出来ていないためで、 ある程度は仕方がないと思います。 この場合は実際に竿を継いで釣り場で使うときに、 節のところの芽の跡が左右(または上下)に交互になるようにして継いで使うこととし、 そのように継いだ状態で矯めておきます。


火入れ(4回目)

継ぎ竿製作画像

3回目の火入れが終わったら、やはり4〜5日置いておき竹が動く(曲がりが戻る)かどうか見ます。 もし曲がりが出ていたらもう一度火入れをします。 曲がりが出ていなかったらそのまま次の工程へ進みます。 なお、火入れの火の強さは回数を重ねた後の方の火入れほど弱くします。


日数をおかずに、何度も同じところを繰り返し火入れしていると曲がりが取れないばかりか、 その箇所がだんだんと焦げてきてカチカチに固まってしまうことがあります。 細い竹の場合なら直接火で炙らずに熱い蒸気を当て竹を柔らかくして矯めることも可能です。 しかしこの場合は矯められる量が少ないです。(2005年2月25日)


塗りの下処理 1 (節磨き、胴磨き)

継ぎ竿製作画像

火入れがほぼ完了して竹が動かなくなったら口巻きを正式にやり直しますが その前に胴塗りという竹の肌への塗装がしやすいように下処理をします。 前回施した仮の口巻きをカッターナイフで削り落とします、 アロンアルファも簡単に剥がせるはずです。 そしてここで、竿全体に使い古したサンドペーパーをかけておきます、 磨く方向は竹の繊維方向だけにし横向きの磨き傷をつけないようにします。 ただ、節のところのミゾと芽のところはこの限りではありません。 この時使うサンドペーパーは使い古したものが無い場合#400程度のものを どこかにこすり付けて「使い古したものとして新たに製作」?します。 新品のサンドペーパーですと細目でも切れすぎます。


握り作り

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像

竿の元の手で持つところに握りを作ります。 一番簡単なのは台形に切った新聞紙に水性ボンドを付けて巻きつけ、 その上から糸を巻いて仕上げる方法です。 握りの太さや大きさや形は自分の好みで好きなように作ってください。 糸は仮の口巻きで使った#30の木綿糸でよいと思います。 今回、水性ボンドが手元に無かったのでアラビア糊を使いました、大丈夫なようです。 握りの長さや太さ、形状には人それぞれ好みがあると思います。 私は手の親指の第二関節(付け根)から人差指の第一関節までの長さ、塗箸程度(10mm前後)の太さ、 円筒形で先に向かってやや細くなる形が使いやすいと感じています。 また、素材はこの太さの竹を使ってもおもしろいと思います。
(2007年01月05日加筆)


へび口付け

継ぎ竿製作画像

竿先の部分に釣り糸を結びつけるために 滑り止めと抜け止めの目的で細い紐などを付けてあるところを「へび口(蛇口)」と言います。 この画像のような1本のものやループにしてあるものがあります。 今回はこの画像のようなタイプにします。 まず、2〜3cm長のリリアン糸を用意します、多少長めに切り取ります。 次に穂先の竹の部分の先端数mmをリリアン糸の中の空洞に入る太さまで尖らすように削ります、 削る時に段は付けないようにします。 細く削った穂先の先端にリリアン糸を差込み口巻きと同じ要領で絹糸を巻いて固定します。 後で塗料で固定するまでは引っ張ると抜けますので、注意してください。 蛇口の長さとして適当なところでリリアン糸を再度切断して 先端のほんの少し部分だけをライターなどの火で軽く焼いてリリアン糸の樹脂を溶かしてコブを作っておきます。
(2007年01月05日加筆)


口巻き

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像
糸巻き部分にキシャギ 巻き始め
継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像
糸止めの準備 巻き終わり
継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像
挿げ口部分 印籠芯側

今回の口巻き(仮の口巻きではなく最終の口巻き)では 糸を巻く部分の竹の表面にわずかな傷を付けて糸が滑ってズレにくいようにします、 これをキシャギといいカッターナイフの刃を立てて竹の表面のごく薄い層を剥がすように削ります。 キシャギは糸を巻く部分だけに施します、糸を巻く部分の長さは仕上がってからの竿のデザインを考え、 各セクションを並べて置いたときや竿を全部継いだときによいデザインとなるようにしましょう。 キシャギが済めばもう一度戸口にサンドペーパーを当て滑らかにします。 糸巻きは戸口の方からはじめます、糸は絹糸の細いものです#50以下がよいでしょう、 糸の端を4〜5回巻いた糸で押さえてから巻き始め、予定の位置まで巻いて糸止めします。 糸は切れない程度にピンと張ってテンションをかけて巻きつけます、 糸を持った手は動かさずに竹の方を回して巻いてゆきます。 また糸と糸との間には隙間ができないように、 また、糸同士が重なりあわないように注意して丁寧に巻きつけます。 糸止めは、同じ規格の糸を短く切ったものをあらかじめ用意しておき、 図の「糸止めの準備」「巻き終わり」ように作業します。
(2007年01月05日加筆)


口巻き塗り 1

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絹糸で口巻きした部分だけに塗ります。 塗料は2液性のウレタン塗料です、規定の量で配合し使う量だけ作ります。 一番最初の口巻き塗りでは、ウレタン塗料はそのままの濃さでよいですが、 カシューや合成うるしを使う場合は専用の薄め液で薄めて塗料が糸を通り越して 竹の表面にまで充分達するようにし、空気が中に残らないようにします。 筆はなんでもよいです、安物の水性絵の具筆でよいでしょう。 握りの部分にも同じように塗っておきます。 重ね塗りのための乾燥時間は使う塗料で決まっていますのでそれを参考にします、 私が使っている「ナガシマ、ネオウレタンクリアー」では20℃x3時間です、 また層間剥離防止のため#400程度のサンドペーパーをほんの軽くかけます。 こうして3回ほど塗ると口巻きの部分は糸目が消えると思います、 握りの部分はあまりツルツルだと滑りますので糸目が消えるまでの塗り重ねはしないほうがよいでしょう。 なお、多めに調合してしまったウレタン塗料は小さな容器に入れて 冷蔵庫で冷やしておくと固まるまでの時間が長くなるので半日くらい保管できるらしいです、 これは「Flyfishing My Life(私のフライフィッシング)」 のふりーすとんさん に教えていただきました。


口巻き塗り 2 (砥ぎ+塗り重ね)

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孫枝の切り取り処理 これくらいの曲がりはOK

糸目が消えた口巻き部分に耐水サンドペーパーで水砥ぎします。 塗装面のムラがなくなるまで研ぎます、しかし糸が出るまで砥いではいけません。 この作業は今後塗り重ねるたびに行いますので、一度にやろうと思わず少しずつ研ぐという感じです。 概ね塗装面の80%〜90%の面積が砥げて残りの面積はそのまま、という状態がよいようです。 塗り重ねる時は表面を充分に乾かします。 水砥ぎの時には、耐水サンドペーパーの台として硬質ゴムや木の平らな面を持つ片を当てるのが よいのですが、面倒なのでしていません。
(2007年01月05日加筆)


塗りの下処理 2 (胴の洗浄)

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次の胴塗りに入る前に竿の竹の表面の汚れを落としておきます、 シンナーやベンジンなどの揮発油をティッシュペーパーにしみ込ませて拭けばよいと思います (本格的な場合は油絵などで使うテレピン油を使います)。 綺麗に見える竹の表面でも結構汚れているものです。 竿作りの作業中に触った自分の手からの脂がほとんどで、それに細かい埃などが 付着している状態だと思います。 揮発油で拭いてからはあまり触らないほうがよいでしょう。 本当の和竿の製作工程では下記の芽入れのタイミングが違います、 今回は墨やポスターカラーを使いますので、下記の位置に芽入れの工程を入れました。 その芽入れの作業は手をきれいにしてから行ってください。
(2007年01月05日加筆)


芽入れ

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和竿では節のところの芽取りした跡に色漆でプックリと芽の形を描きます。 これを芽入れ(あるいは芽打ち)といい、個性と見た目の竿の勢いが出るポイントになっています。 今回は年賀状を書く時くらいしか使わない(私くらいかな?)筆ペンでトライしてみます。 この工程は胴塗りをする前の使い古したサンドペーパーで磨いた竹の肌に直接描いてみます。 墨がいくぶん竹に染み込みますので一発勝負でがんばって下さい。 色の付いた芽入れをするのでしたら水性絵の具やポスターカラーでも大丈夫です、 上からウレタン塗料を塗ってしまえば水でにじむことはありません。


胴塗り (刷毛塗り)

継ぎ竿製作画像 継ぎ竿製作画像

口巻き塗りができれば次は胴塗りです。 胴塗りとは糸をまいていない部分の竹自体に塗装することです。 胴塗りは拭き塗りといって繊維クズが出ない布に塗料を少しだけ含ませて 拭くようにして塗るときれいに仕上がるのですが、 何度も何度も繰り返さなければいけませんので面倒です。 拭き塗りは仕上げだけにして、ここでの胴塗りは糸巻き部分と同じように筆を使った刷毛塗りをします。 コツは筆にあまり多く塗料を含ませないことです節単位で塗料がタレないように丁寧に進めてください。 なるべく薄く2回塗ります。 もちろんこの段階では口巻き部分と同時に塗ってもかまいません、 この場合竿を手で持って支える箇所がなくなりますので印籠芯に使った釘をコミに差し込んで利用します、 また塗りが乾く(固まる)まで竿を置いておく台は 薄いプラスチック板などで工夫するとか木切れに穴を空けて印籠芯を差し込める台を作るなどします。 (発泡スチロールのブロックにブスッと印籠芯を差し込んだほうが簡単かも!)


仕上げ塗り前処理(塗装面磨き)

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仕上げ塗りに入る前に、塗装面に付いたホコリの跡やわずかな刷毛目を消すように、 使い古したサンドペーパーでその部分を砥ぎ、 全体は下地処理としてハミガキのペーストを指にとって竿にこすりつけて磨くとよいです。 ここでの注意は穂先や穂持などの細い部分では往復で磨きをかけると引っ掛けてしまい 折ってしまう恐れがあることです。繊細な部分は竹を持った手元から先の方へ一方向のみの磨きとします。 この作業が済めば水で湿らせたティッシューペーパーで拭き取った後乾いたティッシューペーパーで拭き取り、 しっかり乾燥させてから次の仕上げ塗りに入ります。


銘入れ

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和竿には握りの直上部に作者の名前が入っています、 刃物や錐の先のようなもので、うすく肌に傷を付けるように書いてあったり、 焼印が押してある場合などがあります。 私は爪楊枝の先に塗料を付けて番号を打つことにしました。 しかし、日本の昔の工芸品には作者の銘が入っていないものが多く存在するらしいのです。 何故かというと、「作風を観れば誰が作ったものか解かるから」とのことらしいです。 同じ竿をもう一本作ろうと思ってもそれが出来なくて、 いつも違う調子の竿ばかり作っている私には、「作風」など縁の無い言葉ですが‥‥。
(2007年01月05日加筆)


仕上げ塗り

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最後の塗りは口巻き部分と胴の部分全体を塗ります。これには筆は使いません、 拭き塗りといって繊維クズが出ない布に薄めた塗料を少しだけ含ませて拭くようにして塗ります、 布にはパンストのハギレを用います。 刷毛や筆で塗ると刷毛目といって塗膜の厚みが不均一になりがちですが、 拭き塗りですととてもきれいな塗装になります、 ただし1回で塗れる厚みはたいへん薄いので2回くらい繰り返します。 乾燥させるときにはホコリがつかないよう留意します、 部屋にホコリが多いようなら箱の中などでの乾燥もよいでしょう。 今回の塗りでも竿を手で持つ部分がありませんのでコミに印籠芯に使った釘と同じものを差し込んでおき、 最後はその釘を持つようにします。1回の塗りで満足できなければ何回か拭き塗りを繰り返してもOKです、 そのほうがベターです。 また、この作業でも穂先や穂持などの細い部分では往復で拭き塗りをかけると 引っ掛けてしまい折ってしまう恐れがあります、 繊細な部分は竹を持った手元から先の方へ一方向のみの拭き塗りとします。


コミ点検

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竿の塗りや砥ぎを繰り返していると、コミの中に塗料や砥ぎカスが入ってしまい、 継ぎが硬くなってしまうことがあります。 こんな時はもう一度ドリルチップを取り出してコミさらいをやり直します (ドリルチップの径を間違わないように!)。 もしコミが甘くなってしまったら印籠芯と同じ太さの釘をコミに差込み その釘のはみ出た部分をライターの炎で加熱してみます、竹は釘を通して加熱され若干縮むはずです。 この方法は竿が完成して使っている内にアマくなったコミにも有効です。 竿を継ぐときに回転させると軸ズレする場合は継ぎ手が真っ直ぐ出来ていないためです、 そんな場合はこの画像の様にあわせるところに印を付けておきましょう。 この印のことを「素人印」と言うとか言わないとか‥‥‥。 印を付ける工程としては仕上げ塗りの前がよいでしょう。


火入れ(5回目・仕上げ)

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竿全体の塗装が終わり塗膜が充分乾いたら、竿を全部継いで点検します。 わずかな曲がりが出ていたら軽く火入れして直します。 直接の炎では火が強いと塗膜が変質する恐れがあるので細心の注意をします、 カセットコンロの代わりにヘアードライヤーの温風の温度を調節して利用してもよいかもしれません。 特に気になる曲がりが出ていなければ火入れの必要はありません。 この画像で曲がって見えるのは竿自体の重さでたわんでいる状態です。


鞘(竿ケース)

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タナゴ竿は細くどこかに引っ掛けて無理をすれば折れてしまいそうですので、 竿ケースは布なんかよりハードケースがよいでしょう。私は直径3cmくらいの竹(淡竹)で作ろうと思っています。 いろいろ自分で工夫して作ってみてください。 この画像の竿ケースは釣具店で売っているウキ・ケース(300円でした) を適当な長さにちょん切っただけのものです、底はバルサ材で栓をしてあります。 こんなケースも手軽に作れるので良いかもしれません。(2005年2月15日)


実釣テスト

竿が出来上がったら、最終のテストとして実際にタナゴを釣ってみましょう。 それで、当たりの感触、食い込みの途中でエサを離さないか、 釣れたときにきれいなカーブを描くか、また魚の引きを充分楽しめるか、などをテストしてみましょう。 今回の私の切り組みでは全長4〜5cmのタナゴではほんの少し物足らなかったです。 下の画像は10cm程度のオイカワが掛ったときの竿のカーブです、 このサイズの魚ならちょっぴりスリリングでした。(一応、合格でマル!)


丸節竹の枝で作った継ぎ竿

注意事項と備考

全般的なこと

はじめに書きましたように、ここでは初めての方でもタナゴ竿作りに取り組みやすいように 「とにかく、なるべく簡単な」方法で進めました。 竿の素材として竹を使う場合は竹の特性を生かしたり弱点を補うためにいろいろな工夫が施され、 また「やってはいけないこと」もたくさんあります。 さらに仕上がった竿をより美しく見せるために多くの原竹を使い選別し切り組みに工夫するのが普通です。 そういうコンセプトではありますがもちろん釣り道具として使いやすく、 また安心して使え、釣趣も充分楽しめる調子で有ることが大前提です。 ほとんど切り組みの問題に帰着しますが、竹の肌の傷や節の位置などにこだわらず、 使って面白い竿にするように調子にこだわって作って下さい。


火入れに関して

ここでは火入れの回数をおおむね5回(穂先は3回程度)としています。 しかしこの火入れの回数というものは「何回やれば完了」というものではなく 原竹によってその回数は異なります。 また、タナゴ竿は細く、火入れでうっかりすると焦がしてしまうという事故も起こしやすいです。 したがって「多少後から曲がりがでても気にしない」「とにかく焦がさない」という気持ちで進めてください。 火入れ不足だと使っている内に曲がりクセが出てきます。 竿師が作られる「売り物としての作品」ではこれは許されません。 しかし、趣味で竿を作ってそれを自分で使って楽しむという過程においては 多少の曲がりが出るのもお愛嬌と考え、ころを見て矯めなおしてください。 仕上がった竿の曲がり直しはヘアードライヤーで暖めるのが安全です。 (火入れというより暖めて多少柔らかくして曲がりを直すということです)


塗りに関して

ここでは使いやすく、仕上がりが綺麗で、比較的堅牢な塗膜が得られる2液性のウレタン塗料を使いました。 ウレタン塗料の透明なものは「透明すぎて」もうひとつ面白くないと思われる方は、 ウレタン塗装の上から「透」(すき)色の合成うるしを使われるとよいでしょう。 この場合は必ずウレタン塗料を先に下に塗って合成うるしは後で上に塗ります、 これを反対にするとウレタン塗料に含まれている溶剤で合成うるしが膨潤して シワシワになったり剥がれたりするそうです。 この情報は「丸竹倶楽部」のOBCむげんさんに教えていただきました。


口巻き糸、飾り巻き糸

口巻き糸には伸びにくく熱に強い絹のミシン糸#50を使いましたが、 あまりケバ立っていなくて伸びにくい糸なら何でも使えます。 一般的なポリエステルやテトロンのミシン糸、木綿糸の細いものでも大丈夫です。 また、色の付いた糸を使えば個性的な竿に仕上げることもできます、いろいろ試してみてください。 この場合は特に最後の方の火入れで加熱しすぎないように注意が必要です。


握り作り

私はタナゴ釣りの初心者なので本当はどんな握りが一番よいのか、正直言ってよく解りません。 ただ、この部分も製作者の個性が表れるところです、ご自分でお好きなように作ってみてください。 竹の根堀材(根の付いた部分ごと土から掘り出した竹)なども面白いかもしれません。


節山について

竹の節はその直上部がプクッと膨れて直径も大きく、 またいびつな断面になっており外見上ずいぶん気になるものです。 この出っ張った部分(節山といいます)を削り落としてしまえば随分とスマートになると思いますが、 手で触って引っ掛かる部分以外はけっして削り落としてはいけません。 なぜなら竹は元々の形状で丁度よい力学的バランスがとれているとされています、 なるべくそのまま使いましょう。


竿の全長

今回の切り組みでは、印籠芯の太さの関係で竿の全長は約1.8mとなり、それ以外の長さでは使えません。 釣り場の条件に合わせて1本の竿の長さを変えて使うためには元上、元上の上、 そのまた上のセクションに接着する印籠芯の太さを同じにしておけばよいです、 また握りの部分だけを取り外して竿を短くした場合でも同じ握りを使うという方法なら さらに長さの調節の自由がききます。 このように同じ太さの印籠芯を使う方法には原竹の太さで制限がありますが、 ちょっとした工夫でこのように長さを変えて使える竿も簡単に作れます。


最後に

趣味でも和竿つくりは奥が深いものです。 私がご紹介したタナゴ竿の作り方はかなり乱暴な工程やサボった工程がありますが、 何本か作っているうちに慣れてきたらちゃんとした和竿の作り方を勉強してみてください、 世界に誇れる日本の伝統工芸の一端が見えてくると思います。 私が知る限りのインターネット上では上の記述でご紹介したサイトの他に 「丸竹倶楽部」のらいじんさんのサイトや としさんのサイトのページで詳しく知ることができます。 また、製作上はいろいろな制約があるということも解ってくると思います、 しかし趣味なのですからご自分のお好きなように作ってみてください。 1本作って満足できなければ改良した切り組みに取り組んでみてください。 出来上がった竿は愛着がある竿になると思いますが‥‥‥ もしも、使っている内に折れても意外と自分で納得がゆくというか、 そのことを冷静に捉えられるものです。そして、「また作ればいいか!」と‥‥‥。


(2005年8月22日更新、へら正さんの 「toshiさんの竹竿」のページがリンク切れしていると思ったら、 toshiさん御本人のサイトが開設されていました。本文修正とリンク修正をしました。)